Exit Button

【インタビュー】元ビジュアル系エステティシャン「ヒィロ」こと田村貴博さん

Energetic Beautist -

東京都渋谷区のビルの一室にたたずむ プライベートエステサロンLily は、予約を開始してすぐに次の月の予約が埋まってしまうという、予約の取れないエステサロン。オーナーの田村貴博さんはヴィジュアル系バンドとしてメジャービューも果たしている経歴の持ち主です。しかし、経営と施術の手腕は一流。オープンしてわずか半年で「予約の取れないサロン」へと成長させ、サロンオリジナル化粧品もリリース。SNSのフォロワーは3万人を突破し、日を追うごとに美容ファンを増やし続けている注目のエステティシャンです。そんな時の人・田村貴博さんに経営の方針やエステティックへの想いをうかがいました。

 

 

 

——高校を卒業されてからずっとミュージシャンとして活動をされていたなかで、なぜ美容に興味をお持ちになったのでしょう。

 

田村貴博さん 美容に強く関心を抱き始めたのは、25歳くらいのときです。それまではバンド活動でばっちりメイクをしていても、適当に拭き取りペーパーでゴシゴシこすって落としたりしているようなレベルでした。そんなスキンケア不足の状態を続けていると、ある時、鏡に映った自分の顔がすごく老けて見えたんです。仕事柄、自分の顔は商品でもあるという意識があったため、「このままではいけない」と基本のスキンケアからパック、サプリメントなどのインナーケアまで勉強しはじめました。最初はまわりのメンバーも「男が美容なんて」という雰囲気で、楽屋にたくさんの美容グッズを持ち込む私を遠巻きに見ていたのですが、27~28歳くらいになると同じ悩みを持ちはじめたようで、だんだん「どこの化粧水がいいの?」なんて質問してくるようになりました(笑)。30代に入るころにはファンの子たちにも美容好きのキャラとして広まるまでに「美容マニア」として成長してました。

 

 

お客様が美しくなっていく姿をダイレクトに実感できる、この感動を求めてオープン


 

——なるほど、エステティック業界に入る前から美容にはお詳しかったのですね。エステサロンの経営にはもともとご興味があったのですか?

 

田村さん 「自分のエステサロンを開きたい」という目標を最初から持っていたわけではありません。バンド活動に一区切りつけるとき、「無職になってしまう!」という危機感から、表情筋インストラクターや心理カウンセラーといったさまざまな資格を取得しました。その後、インストラクターとして講習を行なう立場となり、全国を飛び回るようになりまして、生徒さんとの触れ合いで気づきがありました。まじめに受講してくださり、内容にも満足してくださっているなと感じられる反応がうれしかったです。音楽とはまた別の「好きなことで仕事ができる」という喜びがありました。そのうちに、自分の手によってお客様が美しくなっていく姿をダイレクトに実感できるのは、サロンを持つことなのではないかと思うようになりました。

 

 

 

——では、エステティシャンになる勉強を始めたのはそこからなのですね!

 

田村さん はい。思い立ってからは貯金を切り崩し、1年間学生に戻ってフェイシャル・ボディの技術はもちろん、経営学なども学びに行きました。それと並行して渋谷の地に物件を見つけ、サロンをオープンするまでにこぎつけました。でも、私は店舗で働いたこともなければお客様からお金をいただいて施術したこともない、まったく経験ゼロの状態。当たり前ですが、結果が出ていないエステティシャンのところに人は集まらず、オープンから2~3カ月は予約が入らないことが多かったですね。

 

 

 

「対バンで聞けてラッキー」で終わるのか、「ワンマンにチケットを買ってでも行きたい」と思われるか。エステもそこは同じ。その場で感動があり、口コミが生まれるか、だと思うんです


 

——新店舗をオープンするオーナーにとって、集客は共通の悩みだと思います。田村さんはその状態をどのように脱出したのでしょうか。

 

田村さん まずはエステティシャンとしての確かな腕を持つために、日々実践に時間を費やしました。仕事が終わった後も友人に練習台になってもらうなど、自分の時間を削って施術を磨きました。しかし、それだけでは豊富な経験をもつベテランエステティシャンの方々にはかないません。結果を出す以外のプラスアルファの部分で何ができるか?と考えたときに、私の場合はお客様一人ひとりと真剣に向き合い、徹底的に寄り添うことだと思ったのです。そのために予約時間を多めにとり、一日の施術人数を3~4人に絞りました。心理カウンセラーの資格も生かしながら、出迎えの時点から「今から私はこの人と生きていくのだ」という気持ちで対応させていただきました。

 

 

 

——接客でお客様を獲得した、というのはとてもすごいことです!徹底されたんでしょうね。お客様とのつながりという意味では、田村さんはSNSの活用にも長けていらっしゃいますが、当時から活用されていました?

 

田村さん 私の店に興味を持って下さる方々は、仕事や家庭、学業の都合でエステサロンに通えない、行ってみたいけどサロンに対する恐怖心がある、時間や労力をかけてケアするのが難しい、という美容ビギナー層が厚いと思うんですよね。なので、「O円美容」や「ながら美容」、「~するだけ」というような美容法を求めているお客様のお役に立てるような、プロだからこそわかる知識をできるだけ簡単に、わかりやすくして発信しています。そこで興味を持ってくださったお客様がご来店し、施術やカウンセリングなどで得た感動を広めてくださる。その連鎖が起きることで、まだいらしたことのない方でも「あのサロンに行ってみようかな」と私の店を選んでくださるようになるのではないかと思います。音楽活動でも、「(お目当ての)対バンで聞けてラッキー」で終わるのか、「ワンマンライブにチケットを買ってでも行きたい」と思われるのかはその場所での感動と口コミによって左右されます。そこはエステも変わらないと思うんですよね。音楽活動と同じ原理で、直接足を運びたくなるサロンになるために試行錯誤しています。

 

——なるほど。客層に合った情報を見極めて発信することで、お客様の「第一歩」のお手伝いをしているのですね。実際に田村さんのTwitterの投稿などを拝見しても、頑張りすぎないでできる「美容のためにちょっと気を付けたい」情報が満載で、ずぼら民の私にはすごく参考になりました!(笑)

 

田村さん そう言っていただけるとありがたいです!エステサロンやジムに通って、「あれは食べてはいけない」「この運動をしなければいけない」などとあれこれ言われても、続かない人は多いと思います。また、プロとしては当たり前の知識でも、一般の方は知らないことって山ほどあるんですよね。自分だったらこういうアドバイスをしてくれる人がいたら信頼できるな、という視点で、みなさんのサポートができるように日々考えています。

 

プライベートエステサロンLilyの施術ルーム

 

 

 

美容への情熱が続く限り、お客様のお役に立てるエステティシャンでいたい


 

——最後に、今後のビジョンを聞かせていただいてもよろしいですか?

 

田村さん いま、自分の知識をもとにして開発した化粧品ブランド「Dear Lily」にも取り組んでいます。マスクや美容液などを販売しているのですが、これらをもっと広めていきたいです。自分の店だけでなく、ほかの店舗でも取り扱っていただけるように育てていきたいと思っています。そして、ゆくゆくは自分のメソッドや知識を教える活動もしていきたいですね。

 

——野望があるんですね!

 

田村さん そうですね。ただし、美容に対する自分の熱量が100%である限り、です。100%ではない状態でエステティシャンを続けることほど、失礼なことってないと思うんです。自分の熱量が100%である間は、今のビジョンを全うしながらお客様のお役に立てることを全力でやっていきたいです。

 

 

「絶対的に自身が興味を持っていて情熱を注げること」を仕事にしていきたい、と熱く語った田村さん。エステティシャンとしての技術はもちろん、自身の美容ライフやミュージシャン時代に培った経験をフルに生かしてサロン運営をされていました。大きなサロンでなくても、そのお店の個性・強みをしっかりと周知でまんきているかが、成功へのカギといえるのかもしれません。また、このような志を持った活動が、まだまだ敷居の高いエステティックへの門戸を開くことにつながっていくように感じます。

 


取材・文 柴田彩瑛(エステティック通信編集部)

 

協力:プライベートエステサロンLily
http://www.lily-salon.jp/
『DearLily』化粧品&サプリ通販サイト
rakuten.ne.jp/gold/dear-lily/