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寿命100年時代へ向けて 暮らしに寄り添いながら新たな価値をつくる

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株式会社不二ビューティ「たかの友梨ビューティクリニック」
代表取締役会長 たかの 友梨 氏

 

 

時代に合わせた変化が求められた一年

 

——2017年を振り返るとどのような年でしたか?

 

2017年の9月で創業から40周年を迎えました。1年を振り返ると、ここ数年の流れと同じく、エステ・美容業界が大きく変遷した年でした。私たちは働く環境をゼロから見直さなければいけない時代の節目に立っています。特に従業員数規模が大きい企業にとっては、企業としての形、制度を、今一度整えなければならないという課題に直面しています。これまでのエステティック業界は、徒弟制度の延長線上にあり、働くというより、学びながら技を習得する職人的な業界でした。師匠と弟子との関係性においては、よい点・悪い点があったと思います。この節目で、美しさをめざすだけのエステティック産業を時代に合った文化としてしっかり根付かせていく必要があります。

 

ダーウィンの言葉に「生き残る種とは最も強いものではない、最も知的なものでもない、それは変化に最もよく適応したものである」というのがあります。時代を力づくで乗り越えるという意識ではなく、どのように柔軟に対応していくかが求められているのだと思います。

 

 

美容師資格を軸にエステティシャンの価値を高める

 

——-今の時代に合う働き方について、どんなイメージをお持ちですか?

 

誰もが働きやすい環境を整えることが大きな責任としてのしかかっています。一方で、企業としては、産休・育休制度をはじめとした福利厚生を充実させ、働く人の環境づくりを進めることで、利益を出しにくくなる一面もあります。8時間労働、週休二日制を徹底することで、業務とは別に行なっていた教育の機会、先輩から後輩に技術を伝える時間が削られてしまいます。未経験者にゼロから教えてあげたいけれど、どうしても無理が出てきますから、エステティシャンとしてレベルアップするには業務時間外に学ぶ必要があります。本来であれば、エステティシャンの知識や技術を証明する資格制度があれば理想的です。しかし、新規にエステティシャンの国家資格を設けるのはハードルが高いですから、今後はエステに職能が近い美容師の国家資格保持者を積極的に育てていくことが現実的です。

 

今は少子化の時代ですから、親御さんもきちんと手に職を持てるのであれば、教育にお金をかけてもいいと思っているはずです。ただし、資格を取ることが目的ではなく、サロンで習得する時間が減る分を、それ以外の時間を使って基本知識を高め、自分の技術として上積みしていくためです。幸い当グループには美容専門学校もありますから、新しい時代に合わせたキャリアプラン、女性の自立のために資格や技術がしっかりと身につくキャリアプランを一つずつ整備していくことができます。たとえば、未経験者は入社と同時に通信教育で美容師課程を学び、3年経ったら美容師免許を取れているという流れが理想かもしれません。そして、働き始めてからも成長を実感できるように、世界の基準をしっかりと見せてあげたいので、将来的には留学制度なども整備したいと思います。

 

 

一人ひとりに365日寄り添う存在へ

 

——今後エステティシャンの役割はどのように変化していきますか?

 

キャリアアッププランの整備と併せて、サロンでのスキルを細分化していきます。痩身を担当する人はダイエットプログラマー、お肌の悩みを解決するのはフェイシャルプランナーなどと分け、まずお客様の目的を明らかにすることで、目的の達成、悩みの解決に向けて、来店した時だけでなく、ホームケアまでしっかりとサポート。理想の肌や体型を維持しながら末長くお付き合いできるプランナーにまでエステティシャンの地位を高めていきます。近年になって化粧品の企画・販売をスタートさせました。「どうして高級サロンがオールインワン化粧品を?」と言われることもありますが、たとえば月2回サロンに来るお客様は、ほかの日はどうしているのでしょうか? お客様に寄り添いながら、サロンに来ない日も含めて目的達成に向けたプランニングを行なっていくことは、プロとしての大きな責任です。そのための、化粧品分野への進出なのです。

 

そもそも「たかの友梨ビューティクリニック」という社名の原点には、フランスで見かけた個人経営のエステティックサロン “キャビネ”という形態があります。自宅のキャビネットのように、一人ひとりのお客様に合わせてプランを提案することをめざし、私もたった一人で事業をスタートさせました。創業当初にナースキャップをかぶっていたのも「私が、確かな結果を出していく」という心意気でした。今一度、原点を見直し、お客様一人ひとり、365日にわたって、寄り添えるエステをつくっていくことが求められていると思います。

 

 

美しさを求めるエステから健康に暮らすためのエステへ

 

——-未来に向けて、エステティック業界を含めて社会はどのように変化していくでしょうか?

 

医療技術の進歩や健康意識の高まりもあって、100歳までふつうに生きられる時代がきます。しかし、“健康で”生きられるか、というと話は別です。健康でなければ美しさは保てません。大事なことは、よい血流を保つこと。マッサージやトリートメントを生活に取り込みながら、血の巡りをスムーズにしていくことが健康の基礎だと思います。私は来年に古希を迎えますが、一般的にこの年代になると足を中心に血管が浮き上がる人も多くいます。私はそれが一切なく、足だけ高校生みたいなんです(笑)。これは日頃のマッサージ効果によって、よい血流が保たれている証拠だと思います。

 

これからのエステティックは、健康でいるためのものになります。代替医療の一環として未病の段階から生活に取り入れる時代がきます。元気にきれいで若い体を維持するためのエステティックが当たり前になり、もっともっとニーズが高まっていくはずです。健康なシニアが増えれば、働くエステティシャン側にも70代・80代でも活躍する人が増えてきます。ツヤツヤで元気なお客様とエステティシャンがいきいきと暮らせる社会となっていくはずです。私はこの業界の先駆者として、これからも夢の足跡を残していかなければいけないという使命があります。今一度しっかりとブランドを磨き直しながら、次の時代にあるべき企業・エステティックの姿をきちんと示していきたいですね。

 

たかの 友梨
理容師・美容師免許を取得後、1972年エステティックを本場で学ぶため渡仏。帰国後1978年「たかの友梨ビューティクリニック」を設立。その後、現在まで美容家として多岐にわたり活躍。2013年念願の学校法人「たかの友梨学園 たかの友梨美容専門学校」を開校。全国103店舗を構える企業の主催者としても、その独自の人材育成法が注目されている。