マンダム、メントールによる鎮痛のメカニズムを解明
株式会社マンダムは、自然科学研究機構・岡崎統合バイオサイエンスセンター富永真琴教授との共同研究により、清涼成分として代表的なメントールが、濃度依存的に刺激センサー(TRPV1)の活性化を抑制すること、さらに、ヒトの頸部を用いた感覚刺激評価においても、TRPV1の活性化による感覚刺激がメントールによって緩和されることを見出した。
これにより、これまで明らかになっていなかったメントールの鎮痛メカニズムの一部が解明され、感覚刺激に対する評価法としてTRP チャネルの有用性がさらに明らかになった。
この研究成果について、Journal of Physiological Sciences に投稿し、2015年9月16日に採択された。また、2015年12月10日(木)~12日(土)に開催された「第28回日本動物実験代替法学会」、及び2016年3月22日(火)~24日(木)に開催される「第93 回 日本生理学会」にて発表を予定している。
1.メントールやペパーミントの鎮痛効果
ペパーミントは、古くからヨーロッパやインドにおいて鎮痛を目的とした生薬として伝承的に用いられている。このペパーミントの主成分であるメントールは、 現在多くの製剤に清涼成分としてだけでなく鎮痛を目的に用いられているが、その鎮痛メカニズムについては明らかになっていなかった。
2.メントールの鎮痛メカニズム解明
マンダムでは、TRPチャネルを用いて多くの感覚刺激に対する評価を実施してきた。その中でも痛みに関与するセンサーとしてTRPV1およびTRPA1に着目した評価により、化粧品成分の皮膚感覚刺激や低浸透圧による感覚刺激にTRPチャネルが関与していることを、これまでに報告してきた(参考資料※2.)。そして今回、これまで明らかになっていなかったメントールの鎮痛効果におけるTRP チャネルの関与について研究したところ、メントールがカプサイシンや熱刺激によるTRPV1の活性化を抑制すること(※図1)、またその抑制効果がメントールの濃度に依存すること(※図2)を見出した。さらに、ヒトの頸部を用いた感覚刺激評価を実施した結果、カプサイシンと同様にTRPV1 を活性化する成分であるVanillyl Buthyl Ether (VBE)によって引き起こされた感覚刺激を、メントールが有意に抑制することも見出した(図3)。
3.感覚刺激評価法の確立に向けた取り組み
マンダムでは、生活者が安心して安全に使用できる製品開発に向けた評価法として、TRP チャネルに着目した取り組みを行っている。これまで、皮膚及び眼における感覚刺激にTRPチャネルが関与することを報告してきたが、古くから鎮痛効果が知られているメントールの鎮痛メカニズムにTRPV1が関与していることを明らかにしたことで、TRPチャネルの感覚刺激の評価法としての有用性がさらに確認された。
参考資料
<TRP チャネルへの取り組み>
※1.<感覚刺激のメカニズム>
近年の研究により、「TRP チャネル」(化学物質や温度を感知して電気信号に変換する「センサー」)が、皮膚の神経に存在し、これが感覚刺激受容に関与していることが明らかになってきました。このTRP チャネルは、化粧品を使用した際の不快な感覚「ピリピリ」、「ヒリヒリ」にも関与していることが、 マンダムの研究により解明されている。カプサイシン(トウガラシの主成分)や熱刺激の受容体であるTRPV1、ワサビの主成分の受容体であるTRPA1が関与していることを見出してきた。また、TRPA1はヘアカラーや防腐剤、多価アルコールの刺激にも関与している。清涼化粧品における「清涼感」に関しては、冷たさを感じる際にTRPM8が活性化しており、メントールが配合されている清涼化粧品の多くで、清涼感を感じるのは、このTRPM8が活性化するためだと言われている。
※2.<マンダムのTRP チャネルに関するこれまでのリリース>
1. TRP チャネルを感覚刺激センサーとして化粧品評価に応用 (2007年10月9 日リリース)
2.皮膚感覚とTRP チャネル活性の相関関係 (2010年9月22日リリース)
3.ヘアカラーの刺激メカニズムの解明とそれを低減できる炭酸イオンの発見 (2010年12月6日リリース)
4.ユーカリプトールにおける、 清涼感の不快刺激の低減効果を発見 (2012 年3 月8 日リリース)
5.ヒトが冷たいと感じる温度は外部温度によって変化するメカニズムを解明(2012年10月18日リリース)
6.高い不快刺激抑制効果のある天然由来成分の発見(2013年12月16日リリース)
7.水などの低浸透圧液が鼻腔や眼の中に入ることで刺激になるメカニズムを解明(2015年7月9日リリース)
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