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第12回エステティック学術会議レポート

業界ニュース -

公益財団法人日本エステティック研究財団(東京都港区、理事:関東裕美)は2018年9月10日、TFTビル(東京都江東区)にて、「第12回エステティック学術会議」を開催した。

 

 

エステティックの業務適正化と公衆衛生の向上などをめざして毎年行なわれている本会議。第12回目の開催となる今回は「きれいを手に入れるトータルケア~サービス業の社会貢献について考える~」と題し、超高齢化社会のなかで需要が高まっている、精神的・肉体的・社会的な困難を抱えている人に対してケアを行なうソシオエステティックについて掘り下げられた。

 

基調講演では、厚生労働省施策の近年動向を説明


はじめに基調講演として、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課 主査の鈴木裕里氏が、理容業・美容業に関する厚生労働省施策の現状について近年の動向を説明。理容師法・美容師法について、昨今の事業者・就業者や利用者の利益または利便性に合うように規定の見直しが行なわれたことを報告した。見直しでは、出張理容・美容の需要の高まりにより、理容所・美容所に関する「衛生管理要領」も改正。消毒や清掃などの必要事項が取りまとめられた。

 

つづいて衛生面に関して、同財団理事長で東邦大学医療センター大森病院皮膚科臨床教授である関東裕美氏より、エステティックの健康被害に関するデータに基づいた報告が行なわれた。関東氏は、施術者自身の手の衛生管理と、施術による健康被害を防ぐために利用者から聞き取るべき項目を解説。感染対策のために施術者の手洗いの徹底を促す一方で、手洗いの繰り返しで皮膚の角層が傷つくことによる、手しっしんについても言及。自分の手を守るために、アルコール消毒をお休みしたり、保湿成分の多いハンドクリームを塗り込むなどの対策の重要性を説いた。

 

 

後半は、ソシオエステティックについての概要と実際の施術について


一般社団法人日本エステティック協会 理事長の久米健市氏によると、ソシオエステティックとエステティックは目的が違うという。おもに「スキンケア」「プロポーションメイク」「リラクゼーション」の3つを目的にするエステティックと違い、ソシオエステティックでは施術やカウンセリングによる「癒し」や「励まし」でQOL(生活の質)の向上に寄与することが目的となっている。

 

また、ソシオエステティシャンの活躍の場は、その国の社会的状況により決まり、仕事の形態はその国の法律や医療制度に左右されるのだとか。つづく講演では、石巻赤十字病院でソシオエステティシャンとして働く瀬戸 真由美氏が、そのソシオエステティシャンの活躍の場について実際の活動を報告。現在病院などでフルタイムで勤務するソシオエステティシャンは、瀬戸氏を含めて日本に3名。現場での生の経験を聞くことができる貴重な機会となった。

 

医療や福祉の現場でも美容の効果を発揮できるのがソシオエステティシャン


瀬戸氏が行なっている業務は、メイクやスキンケア、ハンド・フットケア、ウィッグのレクチャー、ネイル、アロマ、エンゼルメイクと多岐にわたる。医師や看護師とチームになって動き、外面をケアすることにより、内面も前向きに明るく、行動的になるように働きかけることが重要な役割だ。具体的には、抗がん剤の投与を決めかねている患者に対し、副作用での脱毛の際の不安を取り払ってあげたりするなど、ゆっくりと現実を受け止められるような手助けを行なう。瀬戸氏は、理容師や保育士の免許など、さまざまなスキルを所持しており、そういった意味で、「ソシオエステティシャンは一人ひとりできることが違う」と語る。患者の内面にアプローチするためのきっかけとなるスキルは無数にあり、ソシオエステティシャンごとに強みを生かして活躍することができる。医療や福祉の現場でも美容の効果に目を向けられつつある今だからこそ、日々のサロンワークのなかでも、精神的・肉体的に困難を抱えている人の存在を認識し、副作用などで悩んでいる人のための店販品を置くなどの配慮をお願いしたいと参加者に呼びかけた。

 

取材・文 柴田彩瑛(エステティック通信編集部)

 


お問い合わせ 公益財団法人日本エステティック研究財団

http://www.jerf.or.jp/