Exit Button

エステティック脱毛の イメージを変えていく

-

2008年、エステティック業界の健全化と、サロンを利用するお客様の安心・安全の確保をめざし、『日本エステティック経営者会』を設立した出口雅康氏。エステティシャン認定試験の制定など、施術者の技術・意識の向上に取り組み、サロンでの脱毛に対する「危険」「不安」といった“負のイメージ”からの脱却に力を注いできた、これまでの活動とその思い、そして今後の展開について、2015年「8月号」でインタビューを行ないました。

 

お客様にも施術者にも安心・安全な美容脱毛とは?


 

出口 エステティックサロンで行なう施術には、フェイシャルや痩身、そして脱毛などのメニューがあります。エステティック業界には様々な団体がありますが、しかし“脱毛サロン”については、統括する団体がありませんでした。また、その施術方法や広告表現などに明確なルールがない状態だったのです。それはまずいだろうと。まとめる組織がなければ、関係各所からの通達や情報も入ってきませんし、業界内での統一見解を持つこともできません。それにもし万が一、不幸にもトラブルが発生してしまったときにはどうするのか。お客様はもちろん、サロンで施術を行なうエステティシャンも安心して、安全に施術できるような環境をつくらなければ 。 その思いから協会はスタートしました。

花上 設立後は、まず、どのようなことに取り掛かられたのでしょうか?

出口 最も力を入れたのは、施術を行なうエステティシャンへの教育でしょうか。やはり、お客様に安心して施術を受けていただくには、エステティシャン一人ひとりの技術と意識向上は欠かせません。特にサロンでの脱毛に関しては、機器の間違った使い方、設定によって、お客様の肌にトラブルを生じさせる可能性もあります。そうした「人の肌に触れることの責任」を認識し、そのうえで、サロンで用いられるさまざまな機器の操作を習得することが大切だと考えたのです。そこで、独自にエステティシャンの認定制度を設け、そのための試験も年に数回行なっています。

 

スタッフの意識を変えた認定エステティシャン試験


 

花上 認定エステティシャン試験とは、具体的にどのようなものなのでしょうか? 受験資格などはあるのですか?

出口 まずは、お客様の身体に施術を行なううえで、「最低限、これだけは知っておかなくてはならない知識」を問う「安全基準試験」を実施し、その試験に合格した者に、サロンで機器を扱うことができる「仮免許」のような資格を発行しています。そして、1年以上の実務経験を積んで、認定エステティシャン試験の受験資格が得られる、という流れになっています。

花上 受験資格を得るまでにも、かなりの知識と技術が必要とされるわけですね。しかも「仮免許」の交付というのは、ちょっと珍しいように感じます。

出口 そうですね。今回の認定制度をつくるうえで、この「仮免許」の交付は、私が最もこだわった部分かもしれません。私どもと同じように、独自の認定試験を行なっている団体がほかにもいくつかありますが、どの試験も認定を受けるためには、ある程度の実務経験が必要とされています。しかし、エステティシャンにとって、実務経験とは「=お客様の身体に触れる」こと。入店後、サロン独自の簡単な研修を受けるだけで実際に施術を行なうのは、お客様にとっても、エステティシャンにとってもリスクが高すぎるのではないかと感じていたのです。「安全基準試験」は人の身体に施術を行なうために必要な知識と、心構えを身につけるためにも欠かせないものだと考えています。

 

花上 実際にエステティシャンの認定制度を導入して、どのようなメリットを感じていらっしゃいますか?

出口 現在、経営者会主催の認定試験に合格したエステティシャンの数は、2892名(2015年6月現在)。やはり、こうした教育制度を整えたことで、技術面だけでなく、スタッフのモチベーションもアップしているように感じます。「認定エステティシャンになりたい」とか、さらにその上の「エクセレントエステティシャンになりたい」といった、自分が将来めざすべきところを見つけられるようになったという声も寄せられています。私どものめざすところは、お客様はもちろん、美容に携わるスタッフも安心して施術ができる環境づくりですから、エステティシャンの方々にやりがいを提供できたこともよかったと思っ

ています。

 

業界内のつながりを深めエステティックをより身近に、安全に


 

 

花上 これまでの活動についておうかがいしていると、経営者会の結束力がとても強いように感じます。今後は、エステ業界内においてどのような役割を果たしていきたいとお考えですか?

出口 設立からの7年間、まずは団体としての「実績」を積み上げるため、認定制度や各種セミナーの開催といった教育制度、さらに、万が一、加盟サロンでトラブルが生じた際にお客様を救済するための保険制度などを整えてきました。また、一方で社会貢献の一環として、災害時の募金活動やチャリティーマラソン、そしてサロン周辺の清掃活動なども行なっています。こうした活動が実を結び、少しずつ業界内で認知されてきたという実感もある。今後は、こうした私どもの活動を一般社会に対してアピールしていくことも必要だと感じています。医療機関以外で「用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線や強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭皮脂腺開口部等を破壊する行為」を禁じた2001( 平成13)年11月8日の厚生労働省による通達は、我々にとっては逆風かもしれない。しかし逆に言い換えればサロンで行なう脱毛ケアの“基準”を決めてくれたともいえる。それに沿ってメーカーは最低限の知識とエビデンスを持つべきだし、われわれ経営者会がそのルールを守れないサロンには厳しく改善を促していく。そして、トラブルが生じたときは、お客様を会員が一丸となって守る。そういった体制をもっと強固にしていかなければいけないと考えています。

 

花上 そのために今、考えていらっしゃる施策などはありますか?

出口 施策……と言えるかはわかりませんが、まずはエステ業界内のタテ・ヨコのつながりをもっと深めていかなくてはならないと思っています。今、業界内には大小さまざまな団体があり、サロンも全国に店舗を持つ大きなところから、地元密着型の小さなサロンまで多数あります。それぞれに力を入れている活動は違うかもしれませんが、「エステティック業界をもっとよくしたい!」という、目標は同じはず。一つにまとまることは難しいと思いますが、意見の交換ができる場は設けていきたい。例えばサロンでの美容脱毛にも、除毛や減毛、制毛とさまざまな表記が用いられているが、ではそれぞれの定義はどのようなものなのか。それを明確にしていかなくてはなりません。そのためにも業界内の意識の統一、意見交換は欠かせないと思っているんです。

 

花上 今では驚くほど安い価格で美容脱毛を行なうサロンも多く見受けられますから、そうした「定義」や「ルール」を明確にすることは大切ですよね。

出口 以前は、エステティックとは限られたお客様に高額なメニューを提供し、「夢」を買っていただいていたと思います。でも今はマーケットが下がり、幅広い年代の方が自分の小遣いから捻出できるくらいの金額で「現実」を買っていると思うんです。当然、サロンに向けられる視線もシビアで評価が厳しくなっている。そうしたマーケットの変化、お客様の声にも真摯に向き合っていかなくてはいけません。こうした取り組みを積み重ねていくことで、これまでのようなエステに対する“負のイメージ”も少しずつ変えていけるのではないかと信じています。

 

 

出口雅康 Masayasu Deguchi

業務用美容機器や化粧の販売・輸出入を行う株式会社ウィズ・アスの代表取締役として多忙な日々を送るかたわら、2008年に日本エステティック経営者会を設立、理事長としてエステ業界の健全化をめざし、活動を続けている。