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シニアの心と体のために エステティック業界に期待すること

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超高齢化が進む現代。エステティック業界をはじめとしたサービス業においても、シニアを迎え入れるためのサービス体制の整備が不可欠となっています。シニアのことを深く知り、互いに支え合える社会を実現するために設立された「日本シニア検定協会」。エステティック通信2015年「5月号」では、その会長である片山さつき参議院議員と副理事長の浅井たみ子氏、理事の川森重樹氏を迎え、「シニア検定」のビジョンと超高齢社会におけるエステティック業界の可能性についてお話をうかがっています。

 

 

健康寿命を伸ばすには「美」は切り離せない要素


 

花上 超高齢社会を迎えて、シニアを支える環境の整備がますます重要視されつつあります。その一翼を担う「日本シニア検定協会」の設立にあたっては、どのような経緯があったのでしょうか?

浅井 私自身、看護師やケアネージャーとしての経験、夫の介護経験を通じて、シニアを介護・サポートする人材の不足を痛感していました。今は介護福祉士や介護ヘルパーといった資格制度もありますが、どれも深い専門知識を習得するには相応の勉強期間が必要です。シニアについて勉強するためには、もっと簡単で広い受け皿をつくらないと、今後の超高齢社会に対応できない、という危機感が日本シニア検定協会設立の根本にあります。若い人はもちろん、例えば子育てを終えた主婦や、アクティブなシニアが支える側に回るために、もっと自然にシニアの心と体を学ぶことができる社会の仕組みを築くことが必要です。日本シニア検定協会がその役割の一端を担えればと思っています。

花上 そのなかで、片山議員が協会の会長に就任されたわけですが、そこにはどんな想いがあったのでしょうか?

 

片山さつき氏

 

片山 私の政治信条のひとつでもありますが、強い日本をつくるためには、健康に問題がなく普通の日常生活が送れる状態でいられる期間、つまり健康寿命を伸ばすことが不可欠です。これまでも、健康寿命を伸ばすための活動を日々のライフワークとしてきました。その点が、日本シニア検定協会のビジョンと一致したことが大きいですね。

浅井 80歳になる私が美しくありたいと思うように、すべての女性はいくつになっても美しくありたいと願うものです。健康寿命を考えるうえで“美”は決して切り離しては語れません。ですからエステティシャンのように、美容業界でサービスに携わる人たちにもぜひ、シニアの健康について学んでほしいですね。

川森 例えば認知症の女性であっても、口紅をさすだけで明るい笑顔になることが知られています。それくらい、“美”というのは女性の健康に大きく影響を及ぼすんですよね。美しくあり続けたいという想いが、健康寿命を伸ばすための重要な要素になっている訳です。

片山 健康を取り戻す際はもちろん、病気にならないためにも、美容に気を配ることは重要な要素のひとつですよね。美容師などのサービス業もそうですし、エステティシャンとなると一回の接客でさらに長い時間を、直接肌に触れながらお客様と一緒に過ごすことになります。シニア顧客と接する際にはより多くの知識が必要になるのではないでしょうか。けれども、美容業界の方たちは介護福祉士や介護ヘルパーのように専門的な勉強をしているわけではありません。だから、シニアに関する知識が圧倒的に不足しているのが実情だと思います。

 

「シニア検定」を通じて、知識を深める裾野を広げる


 

浅井たみ子氏

 

浅井 シニアの心や体について知り、適切なサービスを提供することに加えて、日本シニア検定ではサービス提供者自身が感染症の媒介者にならないことも大切に考えています。肺炎球菌、ノロウイルス、インフルエンザウイルス、白癬など、免疫力の弱まってくるシニアにはさまざまな感染症のリスクが潜んでいます。素手でケアをすると、エステティシャン自身が感染して、その手で別の方を施術することで媒介者となってしまうことがあるんです。

片山 そういった知識を学ぶために、理美容専門学校などの学習期間を延長させるなど、現行のカリキュラムを改編することは現実的には難しい面があります。さまざまな事情を考慮すると、多くの方にチャンスが開かれる「検定」という形は理想的だと思います。いまやシニアの方々は身近に必ずいるわけですから、基本的な知識さえ学ぶことができれば、さらに知識を育むチャンスはたくさんあるはずです。

 

川森 シニアの方に対しておもいやりの気持ちで接するだけでなく、周りの人も含めて自然体でいられることが大切だと思います。日本シニア検定を通じて、多くの人がシニアについての知識を身につけることで、そのような社会の雰囲気や慣習を築くことができれば喜ばしいことですね。そしてその知識がお母さんから子どもへと自然に継承され、老いや病を含めて、自分自身の体を知ることがスタンダードになってほしいと願っています。そして、その一翼を美容業界が担う大切な時期を迎えているように思います。“美”と“ 健康” はまさに表裏一体のものですから……。

浅井 たとえ病気であったとしても、病気を受け入れながら、人生を豊かに過ごす術があるはずです。歳をとるにつれて体の細胞は減りますから、何かしらの不具合が出てくるのはある意味当然のこと。病気を知り、老いを知り、受け入れてこそ、幸せな人生が得られるのだと思います。

 

超高齢社会におけるエステティック業界の役割


 

川森重樹氏

 

花上 例えばエステティックサロンの現場では、シニア検定で得られた知識をどのように活かすことができるでしょうか?

浅井 年齢を重ねると血圧のコントロールが上手にできなくなるので、急に頭を低い位置から高い位置に変えると、血液をうまく脳に送ることができず、意識を失ってしまうケースがあります。しかし、知識さえあれば、施術台から起き上がるときに「ゆっくり起きましょうね」「支えますね」などの声がけをする、という気遣いができます。また、年齢を重ねると骨を破壊する細胞が働き、骨粗しょう症になりやすくなります。特に女性は骨粗しょう症になりやすいので、骨折が起こりやすくなります。精神的な疾患・肉体的な疾患を含めて、最低でもこれだけは知っておいてほしいという知識が、シニア検定には詰め込まれています。老化というのはどういうことか、を理解してからサービスを行なうだけで、その対応は大きく違ってくるはずです。

川森 シニアに対する接客や施術において、善し悪しの判断ができる知識を持つことは、これから不可欠になります。また、心の声に耳を傾けて差し上げるだけで、その方のストレスを取ることもできます。知っているかどうかが大きな差になるはずです。そしてこのスキルは、お店全体の評価レベルを決める大切な要素になっていくことでしょう。

 

花上 今後、シニア検定を通してサービス従事者の知識が増えることで、エステティック業界に期待することは何でしょうか?

片山 人口構成から見ても、エステティッ業界のお客様にシニア世代が増えていくことは明白です。つまり、この世代をうまく取り込めれば美容産業がますます伸びることは間違いありません。さらに、若者よりもきめ細かなケアが必要なシニア世代を対象にしたサービスが一般的になれば、業界全体のサービス品質が向上するというメリットもあります。そして何よりも全体のサービス品質を向上させることができれば、エステティシャンを含めた美容業界全体の給与などの待遇アップにもつながってくるはずです。現状お給料が上がりづらい業界であることを考えれば、これはとてもいい流れだと思います。

浅井 サービス業に携わるすべての人が、シニアの心身を知ってからサービスにあたるという時代になってほしいと切に願っています。また関係者の方々には、シニアに特化した商材づくりにも力を入れてほしいですね。たとえ半身麻痺であっても、女性がキレイになりたいという心は変わりません。技術者・事業者の方々には、シニアのすべてを受け止めて、心と体をキレイにしてあげてほしいと思います。

花上 なるほど。シニア世代の心身に関する知識をサービス従事者が身につけることは、業界全体の底上げにもつながり、女性たちが美しくあるためのお手伝いをすることで健康寿命を伸ばすことにもつながるんですね。エステティック業界が幅広くシニアの知識を身につけることの必要性を実感することができました。ありがとうございました。

 

 

片山さつき Satsuki Katayama

東京大学法学部卒業後、大蔵省( 現・財務省) 入省。女性初の主計局主計官などを務める。2005 年に衆院選に初当選し、2010 年には自民党内トップで参院選に当選。参議院政審副会長、副幹事長、大臣政務官等を歴任し、現在は外交防衛委員長。日本シニア検定協会会長。

 

浅井たみ子 Tamiko Asai

看護師、介護支援専門員の資格を持ち、長年医療・介護の分野に携わる。1992 年美と健康をテーマに、介護・教育・美容事業に取り組む㈱グローリア21 を設立。医師として地域医療に貢献してきた夫の遺志を継ぎ、日本シニア検定協会副理事を務める。

 

川森重樹 Shigeki Kawamori

1948年創業の法人・美容室・エステティックサロン等を含めグループ7社代表。AEA 認定校中部ビューティーアカデミー理事長。日本シニア検定協会理事。美容業を通じて、「関わるすべての人の幸せのために」を信条に業界発展の一翼を担う。保護司(法務大臣委嘱)を現在まで12 年務める。