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エステティック業界の未来と サロン認証制度

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エステティック業界の雄であり、「エステティックサロン認証制度」をいち早く導入した、株式会社日本ビューティコーポレーション代表取締役力石弘明氏と、日本エステティック機構理事、株式会社ソシエ・ワールド代表取締役社長須藤政子氏に、エステティックサロン業界に対する現状とサロン認証制度導入の成果についてうかがった、2013年6月号掲載のプレミアム・インタビューを一部抜粋してご紹介します。

 

 

花上 サロン認証に至るまでのご経緯を教えてください。
須藤 正直に申しまして、最初は制度に対して懐疑的でした。サロン認証を得るためには、資料作成をはじめとして大変な労力を要します。そのための人的・時間的コストは大きく、また当然ながら通常業務も変わらずに行わなければなりません。サロン認証を得ることの意義や目的を明確にしなければ、とてもスタッフの賛同は得られないと考えていました。しかし一方で、エステティック業界に対する問題意識もありました。全国の消費生活センターには、未だに数多くのエステ・美容医療サービス関連の相談が寄せられています。このような状態では、今後の発展は期待できません。業界の一翼を担う企業として、立場が問われていると感じていました。また当社のエステティックサロンは、ホテルや商業施設などでも展開しています。他業種の方からの信頼を得るためには、第三者機関の評価が必要となります。今後の事業展開のためにもサロン認証を得る意義は大きいと考え、プロジェクトとして着手しました。社内体制としては、各サロンからスタッフを選び20人程度のチームを組み、勉強会を開催しながらサロン認証に向けて取組みを進めました。あらためてエステティックへの認識も深まりましたし、制度について勉強する良い機会となりました。

花上 社員の方が一丸となれば、意識も高まりますし、効果的かもしれませんね。力石様はいかがでしたか。
力石 いま振り返ると、2008年のリーマンショック以前から業界全体の景況感は悪化していたと思います。同時に様々な事業者の参入があり、サロン数も増えた。エステティック業に携わる者として、コンプライアンスがより厳しく問われるようになったと感じています。
当社では、エステティックを受けるお客様の視点を大切にしています。たくさんのサロンが立ち並んでいても、やはりお客様としては、信用のおけるサロンで施術を受けたいもの。安全・安心であることはもちろんですが、それを目に見える形でお伝えしたいと考えた結果、サロン認証の導入に至りました。その過程でスタッフの間で知識を共有できたことは大きな成果でした。
花上 サロンが増加してお客様の選択肢が増えたぶん、サロン選びに迷う方も多いと思います。安全・安心を視覚化して消費者の方にアピールできるという点は、経営的にも大きなアドバンテージといえますね。

 

セラピストに生まれる認証サロンで働くことの誇り


須藤政子氏

須藤 これまではサービスやお客様へのご説明がスタッフによって異なることがありました。多分に属人的なところがあったのですね。しかし導入後は、規則が明文化されているので、すべてのスタッフがそれを学び、守ることができます。倫理教育にも使えるので、経営者にとってメリットは大きいでしょう。また、認証サロンで働いていることの誇りと責任がスタッフのなかで生まれてきています。

力石 お客様に対する信頼性が高まったと感じますね。それは、第三者機関が決めた規則ですので、経営側の目算が入る余地がないからです。経営的な思惑により決まりが左右されることがない。これはお客様の安心感に繋がると思います。またサロンのスタッフの間では、「信頼性が高まり信用度も上がる」と喜ぶ声も上がってきています。
花上 一方で、小規模なサロンの方からは、認証を得るためのスタッフの労力や時間が大きいのではという声もあります。
須藤 確かに、サロン業務を行いながら認証に向けて準備をするというのは大変な作業ではあります。当社でも、労力に見合った利益は得られるのかという懸念の声がありました。しかし、一人でも多くの方に「エステを受けて良かった」と思っていただかなくては、業界に未来はありません。そのためには一時の利益のためよりも、中・長期的なスパンで行動せねばならないでしょう。
花上 化粧品メーカーとしてのお立場からはいかがでしょうか。
力石 多くのサロンの方が関心を寄せていると感じています。ただ、確かに導入後にすぐに売上に結び付いたというサロンはまだ少ないかもしれません。しかし私も須藤様と同じく、近視眼的な経営だけではいずれ行き詰まりが出てきてしまうと考えています。

 

消費者へのサロン認証制度の認知向上が課題


力石弘明氏

 

花上 残念ながら、現在はまだ消費者の方にサロン認証制度が浸透しているとはいえないように感じます。
力石 そうですね。スタッフの間でも、「認証を得ているサロンと、そうでないサロンとの差別化が図れていないのでは」という意見もあるようです。認証サロンが増えれば認知も高まりますので、サロン数はもっと増えてほしいですね。
須藤 消費者の方への情報発信にはもっと力を入れなければならないと感じています。業界内外にアピールするためにも、当社の店舗、また社員の名刺にはエステティックサロン認証マークを入れています。機構理事の立場といたしても、まだまだ課題は多いと感じています。認知向上に関しては、お客様に「認証サロンだからこのサロンを選んだ」と言ってもらえるよう、メディアや予約サイトでアピールをしていく必要があるでしょう。さらに、小規模店舗のサポートにも力を入れなければと考えています。個人経営のサロンの方がサロン認証取得にあたり壁にぶつかった時に、相談できる窓口を設けたいですね。
力石 「第1回 エステティックサロン認証シンポジウム」が開催され、申請を希望するサロンやすでに導入しているサロンの方、クレジット会社など120人の参加がありました。参加者の方は熱心に聞き入っていらっしゃいましたね。こうしたシンポジウム・勉強会をもっと開催してほしいですね。サロンの方にもぜひ足を運んでほしいと感じました。
花上 中立的な立場である第三者機関として、その存在感をより高めることが求められます。
須藤 エステティック産業はもともと、新規参入がしやすい業界です。これまで業界内で監視するシステムがあまり働いていなかったのはとても残念でした。消費者の方に、「自分たちを守ってくれる組織だ」と認識してもらえるようになりたいですね。
力石 エステティック産業はおもてなし業です。お客様にご満足いただけるサービスを提供できていれば、売上げに繋がらないはずがない。サロン経営に携わる方にとっても、意識の変革が求められる時期だと感じています。現在は若手経営者の方も増えていますし、高い志をもった方が増えることを期待しています。自分たちがエステティック業界を発展させていくのだという意識をもってサロン認証制度に参加していただきたいですね。
花上 エステティック業界の20年後、30年後のために、いま一丸となって取り組んでいかなければならないですね。本日はありがとうございました。

 

 

力石弘明 Hiroaki Rikiishi

株式会社日本ビューティコーポレーション 代表取締役。「ポリシー化粧品」販売、美容機器の発売及び卸販売のほか、1986年に直営サロン「アップルマインド」をオープンし美容業界に参入。2003年には「ポリシーエステティックカレッジ」を開校し、エステティシャン養成に力を入れる。

 

須藤政子 Sudo Masako

株式会社ソシエ・ワールド 代表取締役社長。エステティックサロン「ソシエ」ほか直営サロンを全国に72店舗展開(当時)するほか、ヘアーサロン、スポーツクラブの経営、関連商品の販売を行う。2007年より現職。中国をはじめとした海外展開を積極的に行なっている。