OEMでつくる”私だけのブランド戦略”

「売上の軸としてオリジナル製品を持ちたい」「とことんこだわった製品をつくって、ブランディングに役立てたい」など、さまざまな理由からエステサロンがオリジナルの製品をつくるケースが増え始めている。その際、選択肢の一つになるのがOEM。小ロットで依頼できる製造メーカーが増えるなど、そのハードルは下がりつつあるようだ。今回は、読者アンケートによる現状把握と専門家へのインタビューで、OEMについて深掘りする。
■エス通読者にアンケート
多くの人が気になっているOEMについてエス通読者にアンケートを実施。その結果を紹介する。
Q1 OEMで製品を作ったことがありますか?
- NO → 100%
OEMでの製品開発は0という結果に。ただし、うち約60%は「開発・販売してみたいが、不安がある」と回答した。「興味はあっても踏み出せないという印象」
Q2 OEMに対する課題や不安はありますか?
- コストが気になる:42.3%
- 最小ロットが気になる:38.4%
- 品質管理が気になる:23%
- 開発期間が気になる:15.3%
OEMを具体的に検討するための第一歩は課題や不安を明確にすること。多くの人が一番気になっているのがコスト問題。「いまは顧客を増やしている段階」という声も。
Q3 OEMについて知りたいことは?
- 成功事例:46.1%
- 最新の原料トレンド:30.7%
- 法規制:30.7%
- 小ロット対応可能な会社リスト:23%
成功事例を徹底的に研究して、ヒントを見つけたいと考える人は多い。原料や法規制など専門性の高い分野への関心も。
※エステティック通信の27名に対し、OEMに関するアンケート調査を実施(複数回答あり)
■専門家プロフィール
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ベンチャーコスメ株式会社 代表 加藤智彦氏
美容成分ハンターとして国内外の展示会に足を運び、日本国内の知られざる美容成分のスペシャリスト。 |
■OEMとODMの違い
| 項目 | OEM (Original Equipment Manufacturing) | ODM (Original Design Manufacturing) |
|---|---|---|
| 定義 | 独自のアイテムを作りたい人に。 | 安定した品質の製品を早く販売したい人に。 |
| 製品開発・設計 | 配合成分の比率、使用感、パッケージデザイン、機能など、細部にまでこだわりを指定。 | 製造メーカーが持つ既存の処方や美容機器の雛形(ベース)から、サロンオーナーが選定・調整。 |
| 技術・注意点 | 必要な技術や生産設備を持つ製造メーカーを利用。試作や検証に時間がかかり、開発コストが高くなる傾向があるため、製品開発に関する明確なビジョンが求められる。 | 製造メーカーの持つ実績ある処方やノウハウを利用できる。競合のサロンも同じメーカーのODMを利用している場合、製品の差別化が難しくなる可能性がある。 |
| 向いている人 | ・既存の製品に満足できず、強いこだわりがある。 ・独自の施術メソッドがあり、それを最大限に活かす専用アイテムを作りたい。 ・自社内に製品設計や配合に関する知識を持つ人がいる。 |
・初めて自社製品を作るため、開発のノウハウがない。 ・すぐに販売を開始したい製品(例: 季節限定の美容液など)がある。 ・開発の手間を省き、サロン運営や施術にリソースを集中したい。 |
■サロンアイテムはよりウェルビーイング思考へ
科学的アプローチで実現する「肌と心の健康」が今のサロン製品のテーマになってきていると感じています。再生医療やバイオテクノロジーの進歩がスキンケア分野に波及し、エステティックの領域にも「再生」「調律」「多層的アプローチ」という新たな潮流が生まれています。科学的根拠と肌への優しさを両立した高機能な原料は、サロンメニューの高付加価値化や店販品の強化に不可欠です。
■OEMトレンド成分5選

1. PDRN (ポリデオキシリボヌクレオチド)
サケのDNA由来成分。肌のハリや弾力をサポート。ヴィーガンにも対応できるPDRN原料も登場。
製品例:エイジングケア美容液、導入美容液、シートマスク
2. エクソソーム系素材 (Exosome)
細胞が分泌するナノサイズの小胞。細胞内の情報を伝達。ヒト由来、植物由来、発酵由来など多様な素材が登場。
製品例:導入エッセンス、パック・マスク
3. マイクロバイオーム対応 / 常在菌バランス素材
肌の常在菌バランスに着目した菌ケア発想が肌本来のバリア機能をサポート。乾燥・ゆらぎ肌ケアの新定番。
製品例:ベーシックケアライン(化粧水、乳液など)、トラブル肌向けホームケアライン
4. アゼライン酸 (Azelaic Acid)
低刺激で高安定の誘導体が登場。皮脂バランスを整え、毛穴悩みやざらつき、赤ら顔・ニキビ跡といった肌悩みに対応する素材として人気上昇中。
製品例:毛穴ケア用美容液、皮脂トラブル対策、スポットクリーム
5. バイオテク・発酵、幹細胞由来アクティブ
「クリーンビューティ」の進化系として、バイオテクノロジーを用いた原料が急増。微生物由来の保湿成分など。
製品例:高機能ローション、クリーム、ラグジュアリーライン
■OEMの基本スケジュール
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① 委託先をリサーチ・決定 複数のメーカーを比較。コンセプトを伝え、実現可能性や見積もりを協議する。 |
② OEMメーカー打合せ(複数回) | |
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③ 企画・コンセプトの決定 ターゲット層、成分、テクスチャー、予算、ロット数など、こだわりを明確に固める。 |
④ 処方開発・試作 試作品を作成し、使用感や香りの修正を繰り返す。 |
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⑤ 製品仕様の確定・発注 パッケージデザイン、製造数量、価格などを最終決定し正式発注。 |
⑥ 資材手配・製造ライン確保 原料、容器、外箱などの資材を手配し、生産ラインを確保。 |
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⑦ 薬事申請・各種試験 必要な届け出や安定性試験などを実施。 |
⑧ 本製造・充填・包装 決定した仕様で製造・充填・パッケージ包装を実施。 |
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⑨ 品質検査・検品 品質・数量・表示内容の最終確認を行う。 |
⑩ 納品・販売開始 | |
■もっと聞きたい! OEM1問1答
Q1:OEMの委託先を選ぶ上で、サロンオーナーが気を付けるべきポイントは何ですか?
A:まずはコミュニケーションをしっかり取れるか、小ロットでできるか、そして作って終わりではなく販売方法までコンサルティング(フォロー)できるかを確認することが重要です。
Q2:エステサロンがOEMを成功させるために、大切なことは何ですか?
A:「こういう悩みがあるからそれを解決したい」という強いモチベーションと、「その製品が市場にない」という明確なニーズを持つことが大きなポイント!
Q3:OEM製品ができるまでの期間の目安はどれくらいですか?
A:企画からはじまり、試作を重ねて早ければ3カ月、パッケージングや印刷まで含めると半年ぐらいは最低でもかかります。



