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資生堂が発見「スギ花粉が肌のバリア機能を低下させる」

業界ニュース -

資生堂は、スギ花粉に含まれる抗原タンパク質「Cry j1(クリジェイワン)」が肌のバリア機能を低下させることを発見したと発表した。

これまで、「Cry j1」が目や鼻のアレルギー症状を引き起こすことは知られていたが、皮膚表皮細胞への作用を科学的に実証したのは初。本研究成果から、スギ花粉アレルギー対策に加え、肌あれを防ぐ観点においてもスギ花粉が付着しないよう肌を保護することの重要性を発見した。
同研究は、資生堂が2010年から参画している科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CREST(クレスト)の「生理学と協働した数理科学による皮膚疾患機構の解明(研究代表者:北海道大学電子科学研究所 長山雅晴教授)」による成果として、皮膚科学雑誌「Archives of Dermatological Research」の2016年1月号に掲載された※1。

資生堂は、肌のバリア機能への影響を明らかにするために、セロハンテープで組織培養皮膚表皮の角層を剥離して人為的にバリアを破壊したうえで、スギ花粉の抗原タンパク質「Cry j1」溶液を塗布したときの水分量および細胞間脂質量を測定。その結果、水を塗布したときに比べて、「Cry j1」溶液を塗布した皮膚では水分蒸散量が顕著に高くなり(図1)、肌のうるおいが失われることがわかった。
また、肌本来の油分としてバリア機能の維持・回復を担う細胞間脂質については分泌されにくくなり(図2)、細胞間脂質の供給が滞ることが明らかになった。 これらのことから、「Cry j1」によりバリア機能が損なわれることを見出した。
通常、肌のバリア機能が一時的に低下しても、肌本来のもつ回復力(恒常性)により元の状態へ戻っていくことがわかっている※2が、特に肌のバリア機能が低下している人はスギ花粉が付着しないよう肌を保護することが重要だ。

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また、本研究の過程で 肌のバリア機能の低下を引き起こすスイッチとして、特定のタンパク質分解酵素や受容体が関与していることを示す結果も得られた。皮膚表皮細胞において、酵素や受容体を特定してスギ花粉抗原とバリア機能低下との関連を確認した研究は今回が初めてとなる。

同社は、これら一連の知見をもとに、アトピー性皮膚炎や肌あれの根本治療に繋がる基礎知見として今後も肌バリア機能の仕組み解明を推進していく。

※1 Kumamoto J et al. (2016) Archives of Dermatological Research 308: 49-54
※2 Denda M et al. (1997) Journal of Investigative Dermatology 109: 84-90

●関連サイト 資生堂グループ企業情報サイトhttp://www.shiseidogroup.jp/