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時代の変化に対応する会社しかどこの業界でも生き残らない

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「最大のライバルは時代。

 時代の変化に対応する会社しかどこの業界でも生き残らない」

 

 

 

株式会社TERUS&QUEEN

「エステティックサロン シェアラ」

代表取締役 鈴木 一輝氏

 

【Profile】 Kazuteru Suzuki

元高校球児。野球で就職するも肩を壊して挫折。20歳でエステティック業界へ。2002年に株式会社イマージュ(現株式会社TERUS&QUEEN)入社。2016年に6代目代表となり、「成果主義」だった経営方針を「理念浸透型経営」に一転。理念である「素敵なお母さんづくり」につながるさまざまな制度を導入し、新潟・富山・石川・福井・愛知に全10サロン展開する。

 

 

 

時代に合わせ、お店づくりもサービスも変えていく


 

-2019年を振り返っていかがでしたか。

 

鈴木氏 元号が変わり、消費税が上がり、働き方改革が進み、市場が急激に変わっていくなか、私自身も変わり続けるという意志を持って経営してきました。最大のライバルは時代であり、時代の変化に対応できる会社しか残らないと考えています。特に働き方では、会社全体で時短、休日、有給休暇などの制度の充実を早くから整えてきました。今は時間に価値を見出している時代です。特に女性は自分を取り巻く環境により時間の使い道が変化します。結婚し家庭を持つ、出産し子育てをする。おのずと仕事に割ける時間は減っていきます。それを今までと同じ働き方で通そうとすると、当然無理が生じる。そのために時短で働ける環境を用意し、産休後でも自分に合わせて働き方を選択できるようにしました。戻ってこられる環境をつくることで、社員は安心して子育てができ、会社は大切な人材を失わずにすみます。今の日本は共働きでないと成り立たない時代なので、子育て支援や産休明けの労働の改善は必須。女性がどんなライフステージでも活躍できる環境が整っているところは、会社としての強みになったと思います。

 

 

-御社は広い範囲での採用活動をされていると聞きました。

 

鈴木氏 10年ほど前までは、採用活動をしていても離職などで慢性的な人材不足の状況でした。これの打開策として考えたのが四大卒の採用です。当時は就職氷河期で女性の四大卒の就職先が本当にない状態だったため、美容関係志望ではない就活生にも市場があるのではないかと考え、枠を広げ採用を始めました。これは、私が社長になって行なった改革の一つです。最初の動機はまさに「不純」です。しかしいざ採用活動をはじめてみると、彼女たちは面接当初こそエステティックを知らないけれど、面接の回数を重ねる度にエステティックの魅力であるやりがいや楽しさ、そして会社の理念をどんどん理解していくことができるのだと感じました。少子高齢化が進み、採用したい若者がどんどん少なくなっていくなか、業種に関わらず採用活動がうまくいかない会社は衰退していきます。エステティック業界も例外ではなく、間口を広げた採用を考えていくことがこれからは必須です。また新卒社員は、“条件”で会社に入って“人間関係”で会社を辞めていく傾向にあります。そのため、福利厚生を充実させ、よい人材に長く働いてもらう仕組みづくりにも取り組んでいます。その仕組みの一つが家庭訪問です。内定を出した学生一人ひとりのご家庭を訪問し、親御さんに私から会社について話し、親御さんからお子さんの小さい頃のエピソードなどを教えてもらいます。そうすることで距離が縮まり、会社や私たちのことを理解してくれて、安心して子どもの就職を応援してくださいます。また、社員全員が私に近況を報告する機会を設けるなど、離職をゼロにしていくための最大のツールとしてE G( エマジェネティックス)という人間の思考・行動の特性を分析して組織を構築していく仕組みも取り入れています。一人ひとりの特性をみんなで把握していき、良好な人間関係を築いていくための試みです。私は経営者会や異業種交流会などで講演をすることがあるのですが、なぜその顔で女の子100人もまとめられるのかとよく聞かれます(笑)。それは私が、社員がいかに楽しく働けるかということに力を入れているからだと思っています。「素敵なお母さんづくり」をビジョンに掲げ、社員を素敵なお母さんにしていくためのスキームをいろいろ考えて、家族会やランチ会なども行なっています。

 

 

-「素敵なお母さん」とはどのような女性なのでしょうか?

 

鈴木氏 子どもから憧れられるお母さんということです。実際、親子2代でエステティシャンになっている社員もいます。キラキラと輝きながら仕事をしていて、家族との時間も大切にする、そんな格好いい母親の姿を見て、娘も「私もシェアラに入りたい」と思ったそうです。この「素敵なお母さんづくり」を進めていってからは社員の離婚はゼロです。

 

 

 

四大卒から入社した社員が多いという名古屋KANAYAMA店。
彼女たちが元気に楽しみながら働けているのは、適切な評価制度や教育が整っているからこそ。

 

 

金山駅直結のKANAYAMA店は、大きなシャンデリアが目を引くラグジュアリーな空間。
思いやりにあふれた接客と確かな技術力が強み。

 

 

 

「「人生は言葉のレストラン」 

 自分の言ったとおりの世界が広がっていると信じて」

 

 

 

売り上げはもちろん、道徳的な行ないも数字化して評価する


 

-御社の求めるエステティシャン像とは?

 

鈴木氏 エステティックの仕事はコンプレックス産業です。それゆえ、お客様の痛みのわかる人材を作っていきたいというのが根底にあります。両親、家族、仲間を大切にする。そういうことが理解できる人物でないと、この仕事はできません。昨年ラグビーが盛り上がり、「One forAll・All for One」という言葉をよく聞きましたが、私はこの考え方を15年前からつねに軸としてきました。一人はみんなのために、みんなは一人のために、そういうチームを作っていくのが私の考え方です。

 

 

-そのような人材を育てるための評価制度があれば教えてください。

 

鈴木氏 売り上げはもちろんですが、売り上げを上げるためのプロセスも評価します。二宮金次郎が「道徳なき経済は荒廃を招く、経済無き道徳は寝言に過ぎず」という言葉を残しています。つまり、使命感なき美容は崩壊する。逆に、会社の利益がなければ話にならない、ということですね。道徳とは、親を敬う、他人を大切にするなど、当たり前のことを当たり前にするということです。例えば、誕生日の感謝休暇では、お母さんにサプライズしてその様子を写メで報告してもらいます。自分の誕生日はお母さんの出産記念日だからです。また、お墓参りをする、奉仕活動をする、選挙に行く、インフルエンザの予防接種をする。これらはルール化され、実行したことを評価します。離職が多かった時代は、売り上げのいい人だけを評価していました。今の評価制度は、野球でいうと1番バッターから9番バッターまでそれぞれの役割があるという考え方。会社が自分の存在価値を認めている、仲間に必要にされている、そのような部分を見える化して評価しています。

 

 

-今後の展望についてお聞かせください。

 

鈴木氏 5年後の売り上げ高は、今の約2倍の30億円を想定しています。根拠はありません。言ったもん勝ちです。ですが、イチローがメジャーリーグに行ってこれだけ活躍するって誰が想像したでしょうか。彼は小学生のときに「一流のプロ野球選手になる」と決めて、実際になったのです。経営者はそんな“夢”を語れるようでないと。今後、店舗数も社員数も伸ばしていくつもりです。仲間が増えるということは、売り上げも上がる、お給料も増えるということです。「人生は言葉のレストラン」なのです。レストランに行ってうどんを注文したのにカレーが出てくることがないのと同じで、人生も自分の言ったとおりの世界が待っている。だからこそ、思い続け、言い続け、やり続けるということです。