新人研修は正義を教える場。「覚悟」することが「プロへの道」を敷く。
The Innovative People
注目すべきビジネスパーソンにスポットを当て、その魅力あふれる人間性と手がける事業内容を紹介します。
茂藤 雅彦 株式会社クールプロジェクト 代表取締役
戦わずして勝つ。それが僕なりのセオリー
33歳で米国最大級の金融サービス機関を退職、35歳から美容業界にいます。僕にとってはまったくの異業種でしたが、興味を持って1週間に3人の女性と話をしました。ところが、3人が3人とも「この業界にまともな人はいない」「ひどい」というネガティブな話ばかり。知人の奥さんが大手チェーンに在職中だったので聞いてみると、「それは本当だ」と返事がきました。「きれいなイメージとえらく違うな」と思いましたね。でもその反面、きっちりやればうまくいくんじゃないか、正々堂々と普通にやれば日本一になれるんじゃないかと可能性を見出しました。
それから、他エステサロンの情報を入れない・気にしない「鎖国」状態に突入。業界のセオリーも無視。広告にも頼らない。広告からの集客も考えない。他社が何をしているのかまったくわからない状態で事業を進めました。結果、7年目にオリコン顧客満足度ランキング・エステ総合部門にて最高得点を出すことができました。
僕は、売り上げの数字よりもクチコミによるご紹介の数を追いました。100人の新規が来るにはどうしたらいいか。これが焦点でした。
「一流になる覚悟」を自問自答させることがはじまり
良いサービスとは、感動を与えるものです。感動は身近な人に伝えたくなる。だからこそ、クチコミで新規のお客様に来ていただく。僕はこれにこだわりました。日本のエステサロンでは、10%の勝ち組と90%の負け組みがはっきりと存在しています。勝ち組10%のサロンには、お客様に対する「想い」があります。外見を磨くだけでなく、心まで豊かにできるのがエステティシャンです。その仕事は、自分の使命だ、だからプロになるんだ、と思えるかどうか。勝つためには、想いを持てる人間を育てなくてはなりません。ですから、僕は社員教育に力を入れています。
スタート時の4人体制の頃から、スタッフの教育は僕の仕事でした。わが社の男女比は99%以上が女性。店舗はもちろん、本部を運営しているのも元エステティシャンのスタッフ。中途も新卒も、みんな私の研修を受けています。4月に入社、だいたい6月いっぱいまで僕が会社の理念と指針をみっちり教育します。特に新人研修では、「一流のエステティシャンになる覚悟」を持てるかどうかを自問自答させます。「この仕事は自分の使命」と思えないと、壁を乗り越えることも、すべての行動に自信を持つこともできません。
創業時からこれまで、会社の求人にはいろいろな人から応募がありました。高校中退のヤンキー娘だったり、一見まじめそうなのにひねくれていたり。僕は、彼女たちを相手に、言ってみれば「正義の話」をしていくわけですから、ひねているのが改善する子もいれば、改善しないまま辞める子もいました。技術や提案の仕方を教える前に、人として土台ができていなければ、何を教えても学習したものが積みあがらないし、一流にもなれません。
ルールがあれば働きやすい。ルールは成長を約束する条件
研修では、会社のルールも説明します。行動規範などではなく「楽しく働くためのルール」です。たとえば、「良い体調で仕事をすること」「注意は、その場で伝えること」「プライベートでも特定の職場スタッフと仲良くしないこと」「うわさ話はしないこと」などです。項目はたくさんありますが、減ったり増えたりしています。守れるようになると消えて、別のルールが生まれることもあります。職場は、ルールを守れば楽しく働けるはずなのです。ルールを守ることで、「人として」の土台ができてきます。だいたい1年くらいルールの中で仕事をしていると、2年目には新人を指導できるようになってきます。これはどんな人も一緒。
ルールがあるから、迷わず成長できる環境にもなっているのです。今では大学新卒や他分野でキャリアを積み上げてきた方からの応募もありますが、中途も異業種も学歴も関係なく、一律にそう思えますね。
社会を教えることで、一人前のプロにしていく。全社員には、お客様も自分も幸せに美しくできるプロであってほしい。僕の願いです。
茂藤 雅彦 株式会社クールプロジェクト JBマシナリー事業部
大学(薬学部)中退後、医療機器販売会社、外資系大手保険会社(ファイナンシャルプランナー)の勤務を経て、2002年にエステサロン経営会社㈱クールプロジェクト設立。現在、エステティック事業部においてクールエステティック、クールグランボディ、クールフェイシャルボーテ、クールアイラッシュの4ブランド計9店を石川県、富山県、福井県にて展開中。2010年ドクターズブランド純国産美容機器メーカー「J.B.MACHINERIE」を設立し、現在JBマシナリー事業部として国内外に幅広く事業を展開。