「安全な機器」はもちろん「安全に使う」ための教育も提供したい
グローバルサイエンス株式会社
会長・笠原 征夫
広告代理店「電通」、製薬会社、化粧品会社での勤務を経て、33歳で化粧品のOEM会社を設立。その後、エステサロンにおける美容機器の潜在的需要に着目し、美容機器の開発製造に着手。さらには富士山の麓に酵素ファスティングを中心とした「北斎スパ」を開 業。現在は医療機器の開発も手がけ、最先端の美容医療を目指している。
ルラ美容クリニック
千葉院院長・林 みどり
岩手医科大学医学部卒業。よりよい自分、より好きになれる自分を提供できることに魅力を感じ、形成外科・美容外科の道へ。千葉大学医学部附属病院、成田赤十字病院などで 形成外科・美容外科の経験を重ね、2021年にルラ美容クリニックに入職。2021年7月よりルラ美容クリニック千葉院院長に就任。
コロナ禍でさらに強まる「キレイになりたい」想い
――林院長が所属するルラ美容クリニックとは、もう3年を超えるお取引があるそうですね。
笠原会長(以下敬称略) はい。2019年の高田馬場院開院時から弊社の系列会社であるダヴィンチテック社の医療機器を利用いただいており、統括医師である武内大先生をはじめ、医師の皆様から医学的見地に基づいたさまざまなアドバイスもいただいています。こうした専門家の意見や 知識を美容機器に反映し、開発・研究に取り組んでいることこそが、弊社の強みだと自負しています。
林院長(以下敬称略) 美容医療の現場で使われている機器の進化は年々加速し、次々と新しい機能が登場するようになりました。想像すらしなかった機能を搭載した機器が登場し、驚かされることも少なくありません。私たちも常にこうした進化についていけるだけの知識・技術を磨かなければならないと、身が引き締まる思いです。
――新型コロナウイルス感染症の影響が続いた2021年となりましたが、お二人にとってどのような年でしたか?
笠原 海外への発信など、思うような活動ができない部門もありましたが、弊社はおかげさまで好調な収支 で終えることができました。気になる部分の施術を終えた人が、その後2カ所、3カ所と施術メニューを追加するケースが増え、相対的に売上が伸びていった印象です。
林 そうした流れは美容医療の現場でも起こっており、弊院の来院数もこの年高い水準で推移しています。自宅で過ごす時間ができ、ダウンタイムが気になりにくくなったことから、今まで治療を躊躇していた人が 来院され、その後、治療箇所をプラスしていくというケースが非常に多く見受けられました。今までは韓国などの海外で治療を受けてきたけれど、コロナ禍による出国停止で国内クリニックでの治療に切り替えたという人も多いですね。
笠原 よくメディアで「海外の美容・ 医療はすごい」と紹介されることもありますが、日本とは法制度が異なるというのが前提にあり、一概に比べられるものではありません。例えば韓国の美容クリニックで「治療」として提供されているものの多くは、日本では「エステの施術」として提供されているもの。そう考えると美容の施術はレベル・技術とも日本のほうが優れていると感じることもしばしば。ですから、コロナ禍によってその優れた日本の美容技術に目を向けてくださる人が増えたことは非常に喜ばしいですね。
林 実際に海外での治療経験がある人に話を聞くと、日本での治療はカウンセリングも充実していて非常にていねいだと感じるようです。2022年はまた海外にも行けるようになると思いますが、このまま日本での治療を選択される人も多いのではないでしょうか。コロナ禍で健康・ 美容に関する意識も高まっていますし、美容業界の好調は続くと思って います。
先進的な機能だけでなく高度な技術・知識の普及を
――人々の美容意識が高まるなか、2022年、新たに考えていらっしゃる施策などはありますか?
笠原 医学的見地を踏まえ、先進技術を搭載した機器をお届けするという弊社の使命はそのままに、今後は その機器を安全かつより効果的に 使っていただくための教育の提供にも力を入れていきたいと考えています。まずは、国内各地に教育センターを設置し、技術・知識の普及を行なっていく予定です。エステも美容医療もその技術を教育する専門機関がなく、先輩の技術を“見て覚える”教育が主流となっていることは現在の美容業界の非常に大きな問題であるため、少しでもその解消に努めていきたいと思っています。
林 クリニックで使う機器については、安全性が高いのは当たり前。それにプラスして安全に使用するためのノウハウをしっかりと教えてくれるかどうかが、機器選びの大きなポイントになります。笠原会長のおっしゃるとおり、私たち美容医療の医師はその技術を学校などで専門的に学んでいるわけではありません。そのため、美容機器メーカーから新しい技術や理論を収集することは、とても大切な学びの機会になっています。
笠原 さらに2022年は東京と大阪に機器を展示し、実際に触りながらその機能を確認できるショールームの設置も予定しています。オンラインの普及によって、製品の概要説明やお問い合わせなどへの対応はス ムーズになりましたが、製品の機能や使い勝手を正しく理解していただくためには、やはり対面での説明が欠かせません。徐々に人々の移動制限も解除されていますし、今後は皆様に直接説明させていただく場を増やしていきたいと考えています。
林 当院の患者様には、エステサロンと美容医療の“違い”がわからないという方も少なくありませんが、エステを選ばれる方も、美容医療を選ばれる方も「キレイになりたい」と いう想いは一緒。こうしたスペースを活用して機器に関する知識や技術を磨くことは、その期待に応えるためのとてもよい機会だと思います。
――2022年は新たな機器の発表も予定されているのでしょうか?
笠原 開発には着手していますが、「いつまでに」と期限を設けているわけではありません。弊社はさまざまなデータを吟味し、安全性はもちろんのこと、確かな結果へ導けると、納得できる状態になってから発表す るスタンスを貫いています。そのために、一人でも多くの優秀な人材を確保し、安いコストで使い勝手のよい製品をお届けできるようにしたいですね。
林 おうち時間の増加でダウンタイムの問題が解消され、美容医療への新たな一歩を踏み出した人が多かった2021年。長年のお悩みから解放された後、すぐに「次はここを……」と治療を追加される方が増えているのも、美容業界への信頼・期待の高まりの証だと感じています。
笠原 競争過多の状態が続く美容業界ですが、時代や社会情勢が変わっても、最後に選ばれるのは高いクオリティ、そしてメンテナンスを含めた満足度の高いサービスにあると思っています。今後も林先生を含め、さまざまな“プロの声”を取り入れながら、日本はもちろん海外へも最先端の技術をお届けしていきたいですね。
笠原 2021年は、友人や比較的近いところでの訃報が相次ぎ、自分の「生」について考える場面が多くなりました。平均寿命と照らし合わせれば、自分に残された人生はあと何日、何時間なのかというのは簡単に計算できてしまいます。そのなかで、自分は何を成すことができるのかを、非常に考えさせられた1年だったように思います。一つひとつの出来事が「最後かもしれない」と思うと、無駄にできることはきっと何もないのでしょう。2022年は、友人や家族とのプライベートの時間も大切に過ごしていきたいです。
林 1年延期、無観客開催と、異例づくしのなかで開催された東京オリンピック・パラリンピック。開催前、私自身は「中止すべきだ」と考えていましたし、世論もそのような意見が大半だったと思います。しかし、いざ開催してみたら、日本人選手の活躍もあり、反対意見が消え、(私を含めて) 多くの人が夢中になって観戦している― ―その世論の変化がとても印象に残っています。ひたむきに、そして明るく前向き に競技に打ち込む選手の姿には、否定的な意見を簡単に打ち消すほどの力と感動があるのだと痛感しました。